日本公共政策学会の概要

「公共政策」とは、社会の公的な問題に関して、地方自治体や国をはじめ、NPOやNGO、住民などが担うさまざまな方針や施策、事業のことです。公共政策には、公園の設置やゴミ収集や道路の整備のような身近なものから、地域活性化政策、経済政策や外交政策などにいたるまで、さまざまなレベルのものがあり、多岐にわたって私たちの生活に深くかかわっています。

日本公共政策学会の目標は、この公共政策を科学的な分析対象とし、評価の手法を考え、よりよい公共政策のための研究を行っていくことです。どのようにして政策がつくられるかを分析したり(政策過程論によるアプローチ)、実施された政策を正しく評価する方法論を研究したり(公共政策の経済分析などのアプローチ)など、取り組みはさまざまです。

公共政策研究は、学際的です。政治学、行政学、経済学、社会学などの社会科学のみならず、たとえば環境政策や電力エネルギー政策の分析においては、エントロピー理論をはじめ物理学や化学の研究成果からのアプローチも必要になります。日本公共政策学会は、このことを踏まえ、最初から学際的な学会として発足しました。それぞれの専門分野からのアプローチを交換しあい、実際に政策立案をされている立場の方々にも多数参加いただき、学際的な学問としての「公共政策学」の研究を進めていくための情報交換の場を提供することが、本学会の目標です。

毎年、研究大会と公共政策フォーラムを開催し、査読付の論文誌『公共政策研究』を刊行しているほか、学会賞や学生政策コンペの授賞、学会報告の表彰を行っています。

混沌とする21世紀の社会、日本、そして世界にとって、公共政策はその重要度を日ごとに増しています。公共政策にすこしでも関心をもたれる方の参加をお待ちしています。

日本公共政策学会設立趣旨

ベルリンの壁崩壊後の世界は、イデオロギー終焉の現実を、私たちに突きつけています。変貌する国際社会と産業構造の中でさまざまな公共問題が噴出しつづけているのに、もはや、旧来型の理念を中心とする公共間題への接近は有意性を失い、政策志向型思考の必要性をこれまでになく痛感させています。しかも新しい現実は、少なくとも3つの課題を、公共問題に学問的政策的関心を寄せる私たちに課しています。

第1に、国際社会のグローバル化の進行が、一国単位で「公共政策」をとらえる狭隘な一国中心主義的アプローチを不適切なものにし、公共政策のそれぞれの領域で、国境の壁を越えた、すぐれてグローバルな思考を求めています。

第2に、固有の公共領域と考えられてきた古典的な国家統治や政治体制の領域にとどまらず、考究の対象領域とレベルは多岐にわたり、それぞれが学際性と相互関連性を強めています。たとえばそれは、高齢化社会に伴う福祉医療政策や財政経済政策、国際関係の変化に伴う産業技術政策や外交安全保障政策から、ローカルな地域政策や地球環境政策にまで及んでいます。

そして第3に、それら変化する現実は、新たな哲学や価値を模索する「理念の検証」と、過去の塵史的経験への考察に支えられた「歴史の検証」という、理念と歴史とのルネサンスを公共政策研究に求め、「バブリックのための学」としての斯学の、方法論を含む限りない理論化を要請しています。

それは実に重く深く、かつ広い問題だといわざるをえませんが、それを抜きにして、新しい公共政策の展望と未来はけっして開かれないでしよう。そしていまだ遺憾ながら、日本の既存の研究者集団には、そうした課題に応えることのできる組織は生まれていません。そのため私たちは、学者や実務家、ジャーナリストなど、今日の公共政策のあり方に深い関心と憂いを寄せる各界の人士の知的交流をはかり、互いの研究を推進し、政策提言機能を強めるべく、ここに、「日本公共政策学会」を組織し、もって新しい時代の展開を切り拓いていきたいと思います。